腰山雅大「シクロクロス、コーナリングテク考察」

Posted on: 2016.01.20

シクロクロスにおける「パワー」「ペース」「テクニック」。レース中も自転車を降りた後も、これらの言葉が頭の中でグルグルと8の字を描いている。今シーズンの殆どをC1選手として走り抜けて、確信が持てたことがひとつありまして。それはテクニックに関すること。

大雑把に言えば <コーナリングテクニックを習得する為の一番簡単な方法> 。

photo:chef-nobuhiro

■状況から考える

理論に裏付けをするべく、少し状況を説明しておくと・・・。今シーズンで特にいい成績が出せたのは2戦。

・関西シクロクロス 東近江 23位 43%
・関西シクロクロス みなと堺 28位 45%

堺直前のFTPは242w、体重は64.5kg/自転車はSSCXでギア比2.0。タイヤはMaxxisのチューブレス、空気圧は1.8

はっきりと言ってFTPもギア比も低い。SSCXという十字架を背負いパワーも無い僕が特別結果を出せた理由は、この2戦とも”コーナリングテクニック”がかなり重要視されたコースだから。コーナリングは得意な方です。

■レースで実際に起きたこと


photo : BOSS photograph.

<コーナリングが得意> この言葉をもう少し噛み砕いて語るなら「タイヤ許容範囲の把握」と「ライン取り」だと思うのです。2項目は常に共存しているけれど、タイヤ許容範囲の方が全体像を捉えるのは難しいはず。

話をレースの中へ。堺で、僕は後続にパックを従えて連続コーナーに差し掛かっていました。全てのコーナーをタイトに攻めて、パックを随分突き放すことが出来たのです。

次の周回、同じコーナーではパックの後ろに捕まり前のペースに合わせて走行する。コースが狭く抜かすことは出来ないと考え、身体を休めながらジッと前の選手たちのラインを眺めていました。

よく見れば、とにかくコーナー手前で大きく膨らんで曲がっている。側から見ていると「曲がる為」ではなく「膨らむ為」に膨らんでいるとしか思えない。僕はそのラインを無視して真っ直ぐ侵入して真っ直ぐ抜ける、特にタイヤが滑りそうな感覚はなかったように思います。

彼らは「アウト イン アウト」という乗り物競技の基本に忠実になるあまり、一番大事な「速く走行するライン」を疎かにしていたように思うのです。


図のように。点線が僕、水色が膨らんでいた人。(点線が正しいライン、では無い。今回のケース、というだけ)

次の周回はそのパックの前に僕がいて、さっき膨らんでいた人が後ろ。さっきと同じようにコーナーで離そうとするも、なかなか離れない。あれ?おかしい。何故だろう。その次の周も同じ展開。気になって後ろに意識をやって分かったのが、完全にラインをトレースされていたのです。そりゃそうか。

■経験がモノを言うが、経験するためには?

<速く走る為には、速い人のラインをトレースしよう>という、ここまでの話だと何処にでもある結論になってしまうのですが、もう1つ気になることがあります。何故、C1で走ろうともするような経験値高い選手が今更ライントレースしてるんだろう、ということ。

ここからは仮定。速いラインを自分で作るとき、タイヤの限界ギリギリで走ることが多いです。タイヤの限界とはトラクションが抜ける直前のこと。もしトラクションが抜ける直前にアラートが鳴る機能がガーミンに備わっていたら・・・。

そんな機能は無いので <どうやってタイヤの限界を知るか>というと、もうこれは限界ギリギリで試しに走ってみるしかないでしょう。つまり場合によってはコケてみるしかない。

自慢にもなりませんが僕はよくコケます。特に試走中は結構ぶっ飛んでコケることが多い。何故ならコケないとそのコーナーでのタイヤの限界は分からないし、なんだったらコケてもいいようSSCXにしている節すらあります。

あのコーナーで僕のラインをトレースした人はこう思ったんじゃないかと「なんだ、そんなくらいでも曲がれるんだ」あくまで推測ですが、直接にそう言われたことも過去にあったりします。上記の状況も1度や2度では無く。実は多くの人が、タイヤの限界がどこなのか知らないんじゃなかろうか。もしくは結構許容値を余して限界としているのでは・・・?

値段の高いタイヤで余裕を持ったラインを走れば確かに安心なのですが、僕は比較的安いタイヤでもその限界を理解すればタイトにコーナーを攻められると考えています。というか、そのトラクションが抜けるギリギリが一番楽しい。(完全にトラクションが抜けてしまう泥はそんなに好みではない)


photo : chef-nobuhiro

一番大きな例を挙げれば662CCCとその仲間たちのライディング。ダートジャンプや山の中で蓄えた経験はもちろんのこと、大前提として「コケてもしゃーない」という割り切りが存在しているように思うのです。そうじゃなければダートジャンプなんてやってられるはずない。

ついでに言えば、僕はMTB(XC、DH)、BMX、ロード、CXと様々な競技を経験していますが、シクロクロスが一番安全な競技だと考えています。その本意はコケ無いから安全ではなく、コケても速度域が低くて安全、という意味。

■まとめると

・自分が考えているアウトインアウトのラインが、上空から見ると結構無駄な線になっている可能性を疑う。

・自分が考えるタイヤの限界点が、もっと先にあるんじゃないかと疑う。

・最後は、実際に挑戦してみるしかない。

無闇にクラッシュしてしまうのは良くないのですが、僕が試走で作った擦り傷の数々も今となっては様々な経験を用意してくれたと感じているのです。

AUTHOR PROFILE

腰山雅大 こしやま まさひろ/1986年4月10日生まれ。兵庫県出身。 '00年、BMXと出会う。競技を続ける傍ら、BMX専門誌への寄稿、コンテストでのジャッジ、MC、競技大会の主催など、マルチに活動をする。'14年にシクロクロスを始める。変速機のないシングルスピードの車両(SSCX)で参戦を続け、現在カテゴリー1を走る。'15年からアメリカ、ミネアポリスの自転車ブランド “All-City Cycles” のライダーとして活動をする。趣味はコーヒー。 ◆筆者の公式ブログはこちら ◆筆者のInstagramはこちら

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