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佐藤一朗「競技コーチとフィジカルコーチ 」

Posted on: 2016.01.11
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こうしてフェイスブックでトレーニングに付いてのコラムを書くようになってもうすぐ1年が経とうとしています。以前は「けいりんマガジン」という月刊誌に連載したりしていたのですが、気軽に考えている事を発表する場として書くようになりました。時々、まとめて出版して欲しいというお言葉を頂きます。大変ありがたいことです。

実は出版も考えて原稿を書き進めているのですが一向に捗りません。なぜなら、少し書き進む度に書いた事が「過去のこと」になってしまい、その都度修正が必要になりやり直しになってしまうからです。

ある程度話をぼかして書けば簡単なのでしょうが、ご存じのように非常にマニアックなトレーニング理論を書いている僕としては、いい加減な事は受け入れられないのです。しかも厄介なことに、書いている最中に疑問に思うとまた調べ始めたり現場に出てテストしたりするものだから、三歩進んで二歩下がるどころでは無く、時には二歩進んで三歩下がるような事を繰り返しています。
 
これまで僕のトレーニング理論について読んで戴いた方の中には「とても分かりにくい、何を言っているのか分からない。」と思われた方もいらっしゃると思います。最近では分かりやすく、そして実践的なトレーニングを紹介するサイトや書籍が多数出版されているので、普段そういった物を読まれている方に取っては分かりにくい話ばかりだと思います。
  
僕は普段トレーニングコーチの話をする時「競技コーチ」と「フィジカルコーチ」という表現を使って両者を区別しています。どちらも自転車競技を指導するコーチには違いは無く、殆どの場合「同一の仕事」をしているように見えます。むしろ両者を区別して考える方が不自然なのかも知れません。
 
どんなスポーツでもそうだと思うのですが、試合で勝つためには競技を行う上で必要な体力や技術を身に付けなくてはなりません。自転車競技でもそれは同じです。

僕が競技を始めた頃は「体力や技術」がどういう事なのか知る機会はありませんでした。ただひたすら自転車に乗って走り、そしてレースに出ていました。しかし指導者として選手にアドバイスを贈る立場になればそう言うわけには行きません。勝てる勝てないは結果としても、勝つために必要な指導が出来なくては誰もコーチとして認めてくれないでしょう。
 
コーチとして選手と対峙したときに最も求められるのは「勝てない理由の分析」と「勝つための方法」だと思います。しかしここで問題になるのがその理由と方法が1つでは無いと言うことです。これはコーチの持っている眼と能力に寄るところが大きいと思うのですが、大きく分けると2つのパターンがあります。

1つはレースの展開や、作戦、技術的な部分に敗因を求めるタイプ。もう1つは走る上での体力や筋力、心肺機能に敗因を求めるタイプです。当然のことですが、勝つための改善策も同様に分かれていきます。これが先ほど言った、僕の中で「競技コーチ」と「フィジカルコーチ」の分類を始めたきっかけです。
 
少し分かりにくいと思うので、もう少し具体的な事例を挙げてお話ししましょう。
 
僕の言う競技コーチとは、大会での選手の起用や作戦面の立案を1つのゴールにして考え、レースでの結果に対して直接的に関与していく仕事です。その為の準備として、トレーニングでは選手のパフォーマンスを確認したり、チーム競技ではコンビネーションのトレーニングを指導します。また選手起用や作戦立案のためには大会に参加するライバル選手の情報を収集する事も必要となるでしょう。
 
それに対してフィジカルコーチは、選手の身体的パフォーマンスを分析し、競技に対して適正なパフォーマンスを発揮出来るパワーやエンデュランスの能力を向上させる事をゴールにして考えています。

その為には医科学スタッフやマッサー、ストレングストレーニングの指導を行うコーチとの情報交換や、何より競技コーチがどんな選手を求めているのかを理解する必要があります。その上で、選手にとって必要なトレーニングプランを立案し、直接指導にあたる競技コーチに情報の提供を行います。
 
言ってみれば、競技コーチは競技全体を見てコーディネイトするコーチで、フィジカルコーチは選手個々を見てパフォーマンスの向上を目指すコーチと言えば分かりやすいでしょうか。小規模のチームであれば、これら両方の役割を1人のコーチや顧問の先生がこなさなくてはならないことも多いと思います。

ところが残念なことに、競技コーチの指導の助けになるサイトや書籍は多いのですが、フィジカルコーチの指導の参考になるサイトや書籍は殆ど目にする事がありません。この2つの役割はいわば自転車の車輪同様2つ揃って始めて機能する物です。どちらか片方しかなければ前に進むことは困難です。そこで僕のコラムでは、敢えてフィジカルコーチの分野に特化して書いています。
 
それともう1つ理由があります。まぁ、これは言い訳にもなってしまうのですが、職業としてコーチあるいはトレーナーをやろうと思ったとき、両方一辺にプロと呼ばれるレベルに達するのは余りにも僕のキャパシティーが足らないからです。フィジカルの分野に特化していても時間が足らなくて困っているのに、その上競技の部分にまで足を踏み込んだら間違い無く中途半端になってしまうでしょう。


 
ということで、今年もマニアックなトレーニングネタを提供していきたいと思いますのでよろしくお願いします。画像は壁紙シリーズから。2014インターカレッジのチームスプリント(2走)を制した柴崎俊祐選手。昨年春より愛媛に移住し、今春から教員として高校生の指導を行いつつ競技を続けています。目指すはもちろん”No.1″ですね!!

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うトレーナーズハウス代表。自らの競技経験に加え鍼灸按摩マッサージ師としての知識を生かした、運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の研究を重ねる。現在は鹿屋体育大学自転車競技部のコーチとして指導を行うと同時に、競輪・ガールズケイリンなどの多数のプロ選手の指導も行う。中央大学卒/競輪学校63期/元日本代表 ■TRAINER'S HOUSE ■TRAINER'S HOUSE FACEBOOK

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