佐藤一朗「初めてのトレーニング指導」

Posted on: 2015.12.23

新しいエントリーをする事が出来ず随分時間が経ってしまいました。実は25日から出かける初めてのトレーニング指導の準備に時間を取られてしまい、ようやく一段落したところです。

普段からプロ・アマと問わず沢山の選手と関わっているので、新しくトレーニング指導する事になってもそれほど慌てる事は無いのですが、何故か今回はいつも以上に力が入ってしまいました。
 
個別に少数の選手を指導する場合ある程度決まったメニューがあり、初回は選手個々の持っている競技力の確認と、現在抱えている問題点・改善点を探るための動作解析中心のトレーニングを行います。しかしこれがチーム単位の指導となるとそうは行きません。

選手全員に個別指導するだけの時間は無く、一定の流れの中でメニューをこなして行かなくてはならないからです。
 
4年前に鹿屋体育大学に関わる事になったときにも同じ様な状況だったのですが、当初依頼されていた内容は現在行っている内容のごく一部で、しかも選手現況をある程度把握していたのでここまで準備に手間取ることはありませんでした。
 
今回指導にあたるチームは年齢層で言えばジュニア世代。人数的には20名前後。どう考えてもいつも通りに行く訳がないことは分かっています。まずは全体の競技レベルに関する情報収集から始めたのですが、分かったのはほんの一握りだけ。やむなく一般的なジュニア世代に対応出来る負荷とトレーニング強度でプログラムを組み始めました。
 
ある程度プログラムが組終えた頃1つのことに気がつきます。
「今回のトレーニング指導は今後の指針となるケースかも知れない」と。
 
定期的に指導に当たれる場合はそこまで内容を煮詰める必要はなく、むしろある程度フリーハンドで行って選手と相談しながら内容を決めていく位の幅を持たせた方が良いのですが、次にいつ指導する機会があるか分からない状態で最大限の効果を得ようと思うと、選手に対する指導の準備をするだけでなく「指導者に対してトレーニングに関する情報を提供できる準備」をして行かなくてはならないと思い始めたのです。
 
実は外部のコーチに出来る事はとても限られています。3日間の合宿であれば3日間のメニューを組んで、トレーニングの説明を交えつつ指導して行きます。しかしその3日間で選手が吸収できることはごく一部で、「強くなれる」と言えるほど効果があるわけではありません。

せいぜい「何かのきっかけになれば良い。」程度の物だと思います。そして2度3度と合宿を重ねる事でその経験が習慣になり、本来求めている結果へと繋がっていきます。
 
しかしそれ以上に良い方法があります。それは特別なトレーニングを合宿だけで行うのでは無く、普段のトレーニングで行えるようにする事です。つまり、トレーニングに関するノウハウを日頃指導にあたっている顧問の先生やコーチに提供してしまう方法です。
 
そうなると事前準備は普段の合宿の比ではありません。どれだけの情報をまとめれば良いのか、何を必要としているのかと考えれば考えるほど準備しなくてはいけないことが増えていきます。しかしあまり多くの情報を1度に持ち込んではむしろ逆効果になる事もあるので、今回は4点に絞って準備しました。
 
①トレーニング概要レポート
 トレーニングを目的別に分類してジュニア世代の選手に
 とって何が必要なのかを総論的にまとめたレポート。
②今回行うトレーニングメニュー(3日分)
③今回行うトレーニングメニュー個々の目的と実施方法の詳細
④初日の基本メニューで行う動作解析の実施方法と改善点の対策
 
本当であれば動作解析の結果必要になるであろうオフシーズンに行う基礎体力系トレーニングのメニューやその実施方法なども持って行きたいところですが、そこまで説明できるかどうか時間的にちょっと不安なので準備だけして使うかは状況を見て判断したいと思っています。

ですから正直に言えば5点ですね。今回はこれらの情報をもって合宿を行いますが、これがある程度手応えを感じる事が出来れば今後はさらにバリエーションを増やして、ステップアップする方法を考える事が出来るのでは無いかと思います。
 
さあ、どんな選手達に出会えるのか今から楽しみです。
 

画像は壁紙シリーズから。今年のインカレで女子チームスプリント優勝を果たした高田奈生・西島叶子ペア。高田選手は昨年一般入試で入学して自転車競技歴1年半、西島選手は今年一般入試で入学して競技歴半年での優勝です。本人達の努力ももちろんですが、初心者を暖かく迎え一緒に強くなっていける環境がなにより大切だと実感した瞬間です。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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