佐藤一朗「新しいシーズン・新しい目標・新しいチャレンジ」

Posted on: 2015.11.17


(鹿屋体育大学のホームバンクであり、高校時代の想い出の地。鹿児島・根占自転車競技場)

今回は一般的なサイクリスト向けのお話しです。

トラックレースや一部でロードのイベントもまだ行われていますが、一般のサイクリストやJBCFのレースに参加しているクラブチームの方々にとって11月はオフトレの期間に入ったでしょうか。トレーナーズハウスに普段お越し頂いているアマチュア選手も殆どの方はオフに入った様子です。
 
この時期になるといつも会話にのぼる話題は、来シーズンに向けての準備の話です。日頃からマッサージを通して身体の状態を把握しているので先シーズンと今シーズンの違いや目標にしてきたテーマについてはある程度理解していますが、それを踏まえて考える来シーズンの目標やそれ以降の長期的スパンの目標などはその時々で変わってくるものです。
 
殆どの人の場合、来シーズンは今シーズンよりもステップアップする事が目標となるのですが、なにを基準にしてステップアップ出来たと評価するのか、何を目標にして取り組むのかに付いては人それぞれ違うものです。もちろんレースに出て勝つ事を目標に出来ればそれほど楽しいことはありませんが、実際に勝ち負けるを争える位置で走れる選手はそれほど多くはありません。殆どの選手が「去年より良い成績」という事を目標に走っているのではないかと思います。
 
これまでロードレースに参加しても完走できなかった人が完走できるようになる。いつも集団の後ろで付いていくのが精一杯だった人が集団の先頭でローテーションに加わることが出来るようになる。そしていつしかシングル順位でフィニッシュする。表彰台に立つ。そんなふうに1つ1つ階段を上るようにさらなる上へと向けて目標を立てていることでしょう。
 
目標を立てる事はアスリートにとって何よりも大切な事です。一生懸命にトレーニングしたとしても目標がなければ羅針盤を持たずに大海原の航海に出かけるようなもの。(ちょっと例えが古いですね。)

自分のいま持っている競技力を出来るだけ正確に把握して、目標とのギャップを埋めるために行うのがトレーニングです。完走が目標であれば完走できるための体力を付ける。集団に付いていくのが精一杯なら走力や集団走行の技術を高める。シングルリザルトを目指すのであれば走力を高めた上にスプリント力も付ける。

表彰台に乗りたいのであればアタックする勇気とそれを支える高い走力を身につけるなど。今年1年を振り返って自分自身に足らなかったことを、まずはしっかりと反省しなくてはなりません。その上でそれを改善して目標に近づく為にどんなトレーニングをしなくてはならないのか、今この時期にしっかりとトレーニングプランを立てましょう。
 
そんな時、自分の今持っている競技力を把握する方法や、目標達成の為にギャップを埋めるための方法を少し視野を広げて考えて見てください。自転車を速く走らせるために何が重要なのか、今自分の乗り方は本当にベストなのか。オフシーズンに入ったからこそ自分自身の走り方、トレーニングに対する考え方を検証するチャンスです。
 
実績のある選手であったり、経験が長い選手ほど陥りがちな固定観念があります。「自転車はこうすれば速く走れる。」「このトレーニングがベスト。」「このデータでトレーニングすれば間違いがない。」

コーチする側になっても経験論で指導をするのは簡単ですが、理論的に説明しようと言葉に詰まることも少なくありません。僕自身も選手を引退して指導の為の勉強に入るまで気がつかなかった事が沢山ありました。今でも毎年の様に新しい発見の連続です。
 
新しい目標を達成し、来シーズンの活躍を目指すためにも、オフのこの時期に新しい事にチャレンジしたり、普段は触れる事のない違った環境を覗いて見ては如何でしょう!? きっと目標達成の為に役立つヒントが何処かに隠されているはずです。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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