佐藤一朗「シーズンの終わり、そしてシーズンの始まり。」

Posted on: 2015.11.03

国内の主立った大会が終わり、ヨーロッパのロードシーズンも一段落。世界はこれからトラックシーズンに入りますが、国内で活動している多くの選手はこれから数ヶ月オフシーズンを迎えると思います。

僕がアマチュアだった頃は、10月には主要な大会も終わり翌年の2月まではオフトレ期間として殆ど自転車に乗ることはありませんでしたが、今は「乗れるのであれば乗った方が良い」という考え方が主流なので殆どの選手は冬期も乗り続けていると思います。それどころか冬期といえど様々なイベントがあり、明確なシーズンの定義が無くなって来ているようにすら感じます。
 
そもそも競技の世界でシーズン/オフシーズンと分かれているのは「大会等で結果を求める期間」と「そのための準備期間(トレーニング期間)」を分けるためだと僕は考えています。しかしシーズンの区切りが明確で無くなったことで難しくなってくるのがトレーニングスケジュールの作成です。

以前からお話ししているようにトレーニングは身体に変化を促すための刺激を入れる事です。目的に応じて様々な刺激を入れるのですが、筋力(トルク)やパワーを向上させるためのトレーニングと、持久力を向上させるためのトレーニングは相反するトレーニングです。

また自転車を走らせる上で重要なスタビリティーの強化やポジションの変更は、それ以外の強化トレーニングと並行して行う事はとても難しい事です。
 
これまでの様に明確なオフシーズンがある場合、その時期にスタビリティーの向上を兼ねて基礎体力系のトレーニングにウエイトを置くことが出来ましたが、今の様に通年を通してイベントがある場合なかなかそうはいきません。

そこで短いスパンだけでトレーニングスケジュールを考えるのではなく、長期的な目標を持ち長いスパンでトレーニングスケジュールを構築する事が必要になって来ます。

その上で結果を求める時期(イベント)と、そうで無い時期(イベント)を分けて考え、イベントそのものも「競技の経験・実践的トレーニング」として位置づける事も必要になってくるでしょう。
 
長いスパンでのトレーニングスケジュールの構築はケースバイケースで少し難しくなりますが、ワンシーズンのトレーニングスケジュールの構築はそれほど難しいものではありません。年齢や競技歴によっても違いますが、大まかには以下の様なルーティンになります。
 
○シーズンの終了~オフシーズン
・シーズンを通して感じられた課題や改善点を抽出
 => 競技リザルトの分析/動作解析によって改善点を探し出す。
・ポジショニングを改善する必要がある場合、その為のスタビリティーや筋力バランスの改善
 => 自転車を走らせる上で適切な筋バランスの構築とその動作の習得する。
・全体的な基礎体力の向上/筋力強化・心肺機能の向上
 => さらなるトルクアップの為の筋力強化や心肺機能の強化を図り基礎体力の向上を目指す。
 
○プレシーズン
・筋バランスの変化に伴うペダリング動作の改善・習得
 => 前シーズン終了後に取り組んだ筋バランスの改善・筋力強化によって出来た筋肉を的確に動作させるための神経プログラム構築を行う。
・トルクアップ・出力の向上
 => 動作の習得を確認しつつ徐々に負荷を上げ、シーズンインに向けて出力をアップさせていく。
 
○シーズンイン
・自転車コントロール・競技テクニックの向上
 => トレーニング強度を上げ実戦に即したトレーニングを行う。
 
1つのシーズンが終わりを迎えた時が新しいシーズンの始まりです。今シーズンの反省点を探り出し、来シーズンに向けて何処を改善すればいいのか、またステップアップするためにオフの間になにをすべきなのか、来シーズンの活躍はこれからの季節にかかっています。イベントが少なくなるこの時期にしっかりと準備を始めては如何でしょう。
 
Trainer’s Houseでは動作解析やトレーニング指導を行っています。興味のある方はHPをご覧下さい。
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AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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