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栗村修「大会関係車両」

Posted on: 2015.09.06
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現在、スペインで開催中の『ブエルタ・ア・エスパーニャ』に於いて、大会関係車両(モト)と選手との接触事故が相次いでいます。

昔からレース中の車両と選手の接触事故というのはそれなりにありましたが、近年はその数が増加傾向にあるようです。

また、以前のブログに書きましたように、集団落車の件数とそれによる選手の怪我の程度も年々重くなってきており、最近では選手間から『具体的な改善策を』という声が多数挙がりはじめ、その原因についても積極的に語られるようになってきました。

先日、BMCのGMを務めるオショビッツ氏が、UCIのクックソン会長へ正式に『レース中の安全対策の強化』を申し出たというニュースが報じられました。

それを受け、ようやくUCIも対策に乗り出す動きをみせるようです。

とはいっても、短期間で大きな効果を発揮する『改善策』があるとも思えず、この問題については今後も様々な議論が繰り広げられていく気がします。

そもそも、自転車ロードレースというスポーツ自体が、安全対策については非常に脆弱な側面を持っています。

『競技場』としては作られていない一般公道を、レースが通過する前後に突然サーキットに見立てて競争を行い、コースと観客を区切るためのバリケートなどもラインレースに関していえば設置してされいないエリアが殆どで、そして、審判団の目が届かない箇所がそこら中に存在しているという、逆にいえば『プロスポーツとしてよくコントロールされているな』ともとれる環境下で競技が行われているのです。

よくよく考えてみると、ヨーロッパには同様の『自己責任』がベースとなっている『大人のスポーツ』がいくつか存在しています。

私がパッと思いつくところでは、例えば『WRCラリー』や オートバイの『マン島TT』なども、いろいろな意味で大きなリスクをその競技自体が許容した上で成り立っているのだと感じます。

死者数が既に200名を超えているといわれる『マン島TT』が存続できている理由というのは、やはり『伝統』と『自己責任』という、ヨーロッパの文化の根底にある『価値観』が影響しているのは間違いありません。

一方で、観客がリスクに晒されやすい『WRCラリー』などは、近年、オーガナイザーの責任問題などがクローズアップされるようになり、『観客をコントロールできない』という理由でSSがキャンセルになるような事例も出はじめているとも聞きます。

いずれにしても、ヨーロッパの『文化』という偉大な歴史に対しても、間違いなく『時代の波』は押し寄せてくるはずです。

最近、大会関係車両に絡んだ事故に巻き込まれたチームの首脳陣が『訴訟』という言葉をチラつかせるようになってきました。

しかし、UCIレースの運営サイドの仕事をしている身としては、『UCIレースを支えている各関係車両のドライバーさんたちは皆自腹を切ってまでリスクのある業務を担当してくれている(特にモト)』という実情も知っているので、億単位の給料をもらっている選手を引っ掛けたという理由で、彼ら自身(実際に責任を問われるのは主催者になるのでしょうが…)が大きなペナルティを背負ってしまうのもなんだか違う気がしてなりません。

時代の波と、スポーツとしての成熟度が増したことで、それらが新たなトラブルと課題を生み出しているのは間違いないでしょう。

ただし、ドーピング問題同様、目をつむって黙っているだけでは何も改善されないので、問題を探り、根気よく改善に取り組んでいく必要があるのだと感じます。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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