宮澤崇史「スポーツに必要な身体準備」

Posted on: 2015.04.30

自転車に限らず、スポーツをする多くの人が自身の能力向上を願っている。そして、自転車に関してはフィッティングやコーチングを通してポジショニングや、走り方の講座を受ける人が増えてきている。

しかし、自転車に乗るという行為から始める人が多く、その前に身体の筋バランスが悪いことに気がついている人は意外と少ない。

「私が選手時代、自分の身体に必要なことは何か?」という疑問に直面したのは21歳の頃だった。ウエイトトレーニングなどで筋肉がつくとパワフル感は出ても、その筋肉が身体の動きを制御する、いわゆるマイナスの方向に働くこともある。そして、自転車の上でのトレーニングが自転車選手には一番良いとされてきた。

しかし、果たして自転車の上でのトレーニングが本当に走りを良くするのか?

答えはNOだった。

身体バランスの凸凹をまずはフラットになるように補強トレーニングをし、身体のメンテナンスをし、バランスの良い状態で走る事こそが最大限運動効率を上げることに気がついた。

選手時代の20代後半からは人目もはばからず、レース会場で腹筋トレーニングをしたり、スクワットをしたり、欧米人からしたら「こつは何しにきたんだ?」という冷ややかな目で見られたものだ。

しかし、そうすることによって走る為の準備をしてきたつもりだし、それが結果につながったのだ。レース前にコンペックスで特に腹斜筋をビリビリさせていたこともそうだった。

今、私が監督を務めている「Lemonade Bellmare Racing Team」には福田昌弘トレーナーに帯同してもらい、レース前に選手個々の準備を個別に指導してもらっている。それは、ベーシックリーに必要な事、選手個々に必要な事は分けているからだ。

先ずは自転車にまたがって・・・・

ではなく、まずは自転車に乗れる準備をして、初めて自転車に乗ることが重要だと考えている。

インスタントにフィッティングだけすれば良くなると思っている人は、本当に大丈夫だろうか?筋バランスが崩れたままフィッティングだけしてポジションが変わっても、身体の癖は抜けず、数日は良かったけど、逆に腰に痛みが出たり、過剰に一部の筋肉が張ってしまっていないだろうか?

逆にトレーニングが少なくても、常に身体のケアをしていればそれが癖ついて自転車に乗った時に気持ちよく早く楽に走れるだろう。

AUTHOR PROFILE

宮澤 崇史 みやざわ たかし/1978年生まれ。イタリア在住自転車プロロードレーサー。高校生でシクロクロス世界選手権に出場、卒業後イタリアのチームに所属。しかし2001年、母に肝臓の一部を生体移植で提供し手術のハンディもあり戦力外通告を受ける。再びアマチュア選手としてフランスで活動し実績を重ね 2007年アジアチャンピオン、2008年北京オリンピック出場、2010年全日本チャンピオンになる。2012・2013年はカテゴリの最も高いUCIプロチームに所属。2014年のジャパンカップで現役を引退。 筆者の公式ブログはこちら

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