佐藤一朗「2020年を見据えて今できること。」

Posted on: 2015.02.26

あるべき姿を考える。2020年を見据えて今できること。
……独り言です。
  
自転車競技を20年以上もやっていると、トレーニングやポジションに付いて考える事はどうしても「小手先」の事ばかりになってしまう。ハンドルのセッティングやサドルポジション、良く悩むのはシューズのクリートのセッティング。本来どうあるべきかなんてことはそっちのけで今上手く走れる事が何より大切。30代も後半の選手ともなればそれは仕方のない事だと思った。
 
昔、陸上競技をやっていたときに「良いフォームだから良いタイムが出るのではなく、良いタイムが出たときのフォームが良いフォームなんだ」といった様な格言めいたことを耳にした覚えがある。だから今一番感じよく走れるセッティングやフォームが正しいフォームなんだと思っていた。
  
競技を引退して自転車競技について研究したり指導するようになって思うのは「昔はそれで良かった、でもその言葉は20世紀の話。」他の競技のことは分からないけど、少なくとも自転車競技に関して言えば「良いタイムが出たから、良いセッティング、良いフォーム」と思っていたら選手を潰してしまう可能性が高い。
  
そもそも普通の人間が日常生活において使う筋肉やそれらの筋力のバランスは、自転車競技に取って理想的な筋力バランスでは無い。その状態で自転車に乗り「今走りやすいフォーム」でトレーニングを行えば、そのバランスで筋力は強化されていく。つまり理想には近づけない。
 
よく「自転車で使う筋肉は自転車に乗ってトレーニングする」と考えている人がいるけど、1度付いた筋力バランスは相当な意識を持ってトレーニングに取り組まない限り改善は出来ない。
 
つまり速く走るためには、自転車競技に必要な筋力バランスになるための特別に意識したトレーニングを行って、ポジションやフォームを作り直さなくてはならないと言うこと。
 
では、どんな筋バランス、そしてポジションが最も理想的なのか。それが僕の考える「あるべき姿」。もちろんトラック短距離とロードではあるべき姿は違う。それはポジションだけではなく、筋バランスも。もっと言えば筋線維の強化バランスもエネルギー供給の強化バランスも違う。それら1つ1つを選手の目標とすりあわせながらトレーニングプログラムを構築していかなくてはならない。

でも、それを行う事は一時的に競技成績を落とす可能性がある。それは選手にとって非常に辛いこと。また戻せるのか、なんの確証も無いのに、今ある物を崩さなくてはならないのだから。当然ピークを迎えた選手にこれを要求するのは無理だと思う。では何時行えば良いのか?

答えは見えている。ジュニアからアンダーの世代で取り組むしかない。自転車競技を始めて3年から5年程度の段階で筋バランスとポジションを作り直す。今はそれがベストだと思う。もちろん自転車競技を始めるときからそれを理解した指導者の下でトレーニングを開始するのが理想だけれど、今の日本にその環境は殆ど無い。

2020年まであと5年。東京での主役は今の高校生から大学生、そして20代前半の選手達。まだ間に合う。そう信じて頑張って欲しい。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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