福島晋一「日記の効用」

Posted on: 2014.12.22

今はフランスに家族を定住させるために随分時間を割いてる訳であるが、そういった間に過去の日記を読み返してみた。

23歳の時だから今から20年前の日記。読み返すの初めてであろう。

その中に、愛知国体の4km速度競争で6位に入った時のくだりがある。駄文であるがそのまま抜き出してみようと思う。

「一面では大したことではないと思いつつも一面ではその報酬を待つ。一面ではこれは違うと思いながらも、もう一面で自分を納得させたがっている。そして、俺は自転車以外に特に才能がないから将来に不安を感じる」
(中略)
「そして、他人の言動に左右されない、確立された自分を持たなくてはならない」

この20年前の自分の悩みは、今は解決されたであろうか?自分は過去の日記を全てフランスに持ってきた。

自分にとって日記は精神安定剤。相談相手である。

オランダに遠征した後に迎えに来てもらった人。泊めてくれた友人の話など、失礼ながら、忘れてしまっていた話を思い出す。大学時代のライバルとの会話。今、自分が若い選手と接していて、よく聞く話を昔の自分もしている。

先ほどの抜き出した言葉はレース中に良く感じる心境でもある。

逃げに乗って、逃げ切り確定!
逃げに乗った事で第一関門クリア
次は確率が高くなったステージ優勝への関門だ。

もしくは、今日逃げ切って、総合上位につけた。さて、どのタイミングでリーダージャージを狙ったほうがいいか?もしくは、チーム力を考えると最後までリーダージャージを着ないで2位につけていたほうがいいか?

昔はこのような計算も出来ずに「夢はツールドフランスで総合優勝する事です」なんて言っていた。

今は現実的にそれがどれくらい難しい事か分かって、ツールドフランスには出れなかったが、ツアーオブジャパンで総合優勝することはできた。

ただ、ツアーオブジャパンで総合優勝したからと言ってツールドフランスにトライするチャンスがあるかといえば、それは全く結び付かないことも今は分かる。

昔、自転車しか才能がないと不安がっていた自分であるが、(その才能も不十分であったこともいやというほど重い思い知らされたが)今はその自転車が与えてくれたもの(人、経験、見識、健康、お金、モノ)をうまくつなぎ合わせて、将来に保証もないが不安もそれほどなく生きながらえている。

AUTHOR PROFILE

福島 晋一 ふくしま しんいち/岡山県出身 1971年生まれ。20歳からロードレースを初め、22歳でオランダに単身自転車武者修行。卒業後、ブリヂストンアンカーに所属し2003年全日本チャンピオンを獲得。2004年ツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝、2010年ツールドおきなわ個人総合優勝。2003年から始めたチーム「ボンシャンス」代表に就任。2013年シーズンを最後に引退。JOCのスポーツ指導者育成制度でフランスのコンチネンタルチーム「ラ・ポム・マルセイユ」の監督として2年間の研修を経て、現在はアジアのロードレース普及を目指しアジアサイクリングアカデミーを主宰している。 アジアサイクリングアカデミー筆者の公式ブログはこちら

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