BMX出身の稲川翔がG1初制覇!地元岸和田グランプリに向けて更なる飛躍を誓う

Posted on: 2014.06.19

6月15日、栃木県宇都宮競輪場でG1高松宮記念杯競輪決勝戦が行われ、大阪の稲川翔(90期・29歳)が優勝し、デビューから9年目で初のG1タイトルを獲得。これにより稲川は年末の大一番、KEIRINグランプリの出場権を手にした。その舞台は、地元大阪、岸和田競輪場。今年初めて関東を飛び出す最高峰のレースに地元の期待を背負い名乗りをあげた。


地元岸和田グランプリ出場を決めた稲川翔

一連の競輪選手会脱退騒動により出場自粛処分が下されてから初めての開催となったG1レース、高松宮記念杯競輪。最上位クラスS級S班の5選手を含む、トップ選手23人が自粛処分を受ける中、その穴を埋めるべく出場選手たちは、最高グレードに相応しいレースを演じていく。

最終日15日の決勝に向けて激しいトーナメントが繰り広げられる中、静かに、そして力強く優勝への決意を口にしていたのが、稲川翔だった。

相性抜群の脇本雄太(福井・25歳)との連携で準決勝1着をもぎ取り、決勝進出を決めた稲川は、レース後、記者に対して「昨年からG1決勝に立つようになって、タイトルを獲りにいくという気持ちがないと穫れないという事がわかったので、今回は優勝する気持ちで戦っています。自粛中の近畿の先輩方も見ていると思うので、その気持ちも背負って明日は優勝したいと思います。」と語った。

迎えた決勝戦。準決勝と同じく、脇本と連携することとなった稲川。3番手を東口善朋(和歌山・34歳)が固め、近畿勢が唯一3車の強力なラインを形成した。

決勝に勝ち上がった9選手のうち、純粋な先行選手は脇本のみ。そのため、脇本が主導権を握ることは予想されたものの、ライバル達にとっては、すんなりと脇本に先行されては、勝機を失ってしまうため、いかにして近畿のラインを崩すかが勝負のポイントとなった。

レースは残り1周半の打鐘を前に、後方からあがった脇本が先頭へ。しかし、内側に粘った菊地圭尚(北海道・34歳)が脇本の2番手をめぐり、稲川と競り合う形へ。


紫の9番車稲川と黒の2番車菊地が脇本(橙)の2番手の位置を争う

その後、最終ホームストレートで、稲川が菊地のブロックをはねのけ、脇本の2番手を死守したのと同時に、先行する脇本はエンジン全開。1kmタイムトライアル日本チャンピオンが得意のロングスパートで、一気に逃げ切り体制に入っていく。

隊列が1本棒のまま、迎えた最終4コーナー。スピードに陰りが見えた脇本の2番手から、稲川がペダルを踏み込み脇本をかわすと、そのまま1着でゴール線を超え、初のG1タイトルを手にした。


紫の9番車稲川がG1初優勝

今年のKEIRINグランプリが地元大阪の岸和田競輪場で開催されるとあり、年頭からG1タイトル獲得を目標に掲げていたという稲川。出場自粛中の近畿の先輩選手、村上義弘や村上博幸らの教えの中で、競輪選手としてのあり方を学び、デビュー9年目にして、ようやく心身ともにタイトルホルダーに相応しい選手へと上り詰めた。

仲間たちの様々な期待を背負って挑んだ稲川は、レース後、控えめに、そして力強く更なる高みを目指すことを誓った。「KEIRINグランプリ出場への実感はまだないが、出場するに相応しい人間になれるように、年末にむけて今からしっかりと準備を進めていきます。」

また、BMX競技出身の稲川の優勝は、自転車界にとっても価値あるものとなるだろう。4歳から始めたというBMXレースで身につけた乗車技術は、自然と身体に染み付き、今、追い込み選手としての礎となっているという。

「恐怖心のない小さいころから始めるのが良い」と稲川がいうように、20インチの小径車で他の競技にはない縦の動きと横の動きを小さいころに身に付けることで、自転車競技の幅を広げていた。

海外では、トラック選手にかぎらず、ロードやMTBで活躍する選手の中には、幼少時代にBMXレースを行っている選手が数多く存在する。日本ではまだ、BMXから他競技に転身して華を咲かせた選手はいない。

そうした中、タイトルホルダーとなった稲川の辿った道は、国内自転車界の新たな可能性を示すものとなるべきではないだろうか。

【G1高松宮記念杯競輪決勝 結果】
優勝 稲川翔(大阪/90期/29歳)
2位 大塚健一郎(大分/82期/36歳) 
3位 岩津裕介(岡山/87期/32歳)
4位 脇本雄太(福井/94期/25歳)
5位 東口善朋(和歌山/85期/34歳)
6位 浅井康太(三重/90期/29歳)
7位 吉村和之(岐阜/36歳/80期)
8位 柏野智典(岡山/88期/35歳)
9位 菊地圭尚(北海道/89期/34歳)

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