福島晋一「ジロ・デ・イタリア」

Posted on: 2014.05.18

選手の落車シーンは本当に見るのがつらい。路上に叩きつけられて、動かない選手。落車の上に落車を重ねてもなお走り続ける選手。自分もしてきたことであるが、その度にどれだけ自転車が好きか?夢を掴みたい気持ちが強いかを試されている気がする。

マイケル・マシューズがリーダージャージを着ている。彼は2010年ランカウィでクムサン所属だったアヌア=マナンとスプリントジャージを争った。

結果は、アヌアがスプリントジャージを獲得したが、ゲンティンハイランドでポイントを取りに行くと言う相手の裏をついた走りでガッツを見せたのが印象的だった。折れた鎖骨を抱えながらチームカーの中から見守ったが、幸い彼のポイント獲得にはならなかった。

そして、その年のツアーオブジャパン。彼はタイムトライアルを制しながら、富士山も確か4位で登り切った。翌日の修善寺で最後にアタックしてマシューズから逃げ切り2位に入った自分は表彰台で「強いなぁ~ プロツアーに来年は入れるんじゃない?」というと、彼は嬉しそうな顔をしながら「あんたも強いよ」と言った。

そして、4年目になって花開いた。

上に上がっていく選手と言うものは、ちょっとやそっとのことでは止められない勢いがある。些細なことで、成長が止まってしまうのはやはり才能がなかったと言えるかもしれない。

昨日のステージで勝った彼の姿を見て、あのゲンティンでポイントを取りに行った彼の姿が思い出された。

AUTHOR PROFILE

福島 晋一 ふくしま しんいち/岡山県出身 1971年生まれ。20歳からロードレースを初め、22歳でオランダに単身自転車武者修行。卒業後、ブリヂストンアンカーに所属し2003年全日本チャンピオンを獲得。2004年ツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝、2010年ツールドおきなわ個人総合優勝。2003年から始めたチーム「ボンシャンス」代表に就任。2013年シーズンを最後に引退。JOCのスポーツ指導者育成制度でフランスのコンチネンタルチーム「ラ・ポム・マルセイユ」の監督として2年間の研修を経て、現在はアジアのロードレース普及を目指しアジアサイクリングアカデミーを主宰している。 アジアサイクリングアカデミー筆者の公式ブログはこちら

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